AIモデルによる化学療法後の心筋障害リスク予測:基準ECGの新たな活用法

この研究は、アントラサイクリン系化学療法を受けた患者の基準心電図(ECG)から、化学療法誘発性心筋障害(CTRCD)のリスクを予測するための人工知能(AI)モデルの開発について報告しています。アントラサイクリンは、10%以上の患者でCTRCDを引き起こす可能性があり、予後に悪影響を与えることが知られています。しかし、現行のガイドラインにもかかわらず、対象患者の約半数が、心筋障害の監視として推奨される心エコー検査を受けていません。

開発されたAIモデルは、基準ECGから左心室射出率(LVEF)の低下を検出することで、CTRCDのリスクを示唆するECGの特徴を反映しています。本研究では、AIモデルを用いて、アントラサイクリン治療を受ける患者の基準ECGからCTRCDのリスクを予測することが可能であることを示しました。このAIモデルによるリスク予測は、既知のリスク因子を調整した後も一貫しており、予測精度は既知の因子だけを使用した場合よりも向上していました。

本研究は、心筋障害リスクの効率的なスクリーニング戦略の構築に寄与し、限られた心エコー検査リソースの最適な活用により、CTRCDの未検出リスクを減らすことが期待されます。AIモデルを基準ECGと組み合わせることで、アントラサイクリン治療を受ける患者のCTRCDリスクを正確に層別化し、心エコー検査リソースのより良い利用を可能にすることを示唆しています。

引用元)https://www.nature.com/articles/s41467-024-45733-x

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